島唄とうちなーぐち

映画祭の舞台挨拶、この2日間で、地域発信型の映画ばかりを10作品担当させていただきました。郷土愛に溢れ、地域の人たちと一緒に作り上げる映画。地元の協力が無ければ、為し得なかった完成までの道。それ故の手作り感や、あたたかみに溢れた作品が多く、その地を知らなくとも、自らのふるさとを感じる、ぬくもりある時間になったのでは、と思いました。
地元を愛する心といえば、うちなーんちゅの沖縄を誇りに思う姿は本当に素晴らしく、沖縄を離れても、地元に戻ってくる率がとても高い理由は、単に家を守るという目的だけではないような気がします。
沖縄を舞台に作られた、The Boom島唄ものがたり/沖縄語(うちなーぐち)の同時上映が日曜日にありました。島唄をリリースして20年が経ち、さまざまな方がそれぞれの胸にある島唄を語る島唄ものがたりに対し、林賢さんがメガホンを取ったうちなーぐちは、その名のとおり、うちなーぐちでさまざまな方が自らのことを語る映画。いろんな角度から沖縄を見るきっかけになったのでは?と思う60分間でした。
インタビューで宮沢さんは、
「この歌を作った頃、まだ若かった自分は、ひめゆりを生き残った方の話を聞き、その人に届けたい思い一心だった。絶賛もされたが、お叱りも相当受けた。その後、沖縄を知るごとに、島唄や三線が、いかに沖縄にとって神聖で大切なものであるのだと知った。そしてこの歌を作ったからには、一生をかけて沖縄にもっと深く関わっていきたいと思った。だけどその思いに対し、それならここに住んでごらんなさいと、また叱られた。」と語ってくださいました。
沖縄を知れば知るほどに、やはりそこにある壁のようなものを、必死に乗り越えたかったという思いが伝わってきました。そしてそんな思いから、三線を作るためのくるちの木を読谷に植えるプロジェクトを始めた宮沢さん。宮沢さんの思いは、20年という時をかけ、少しずつ歩みを進めていて、その木が100年後、三線の材料となることを夢見る姿には、島唄に眉をしかめた人の心を溶かしていく力があるのでは、と思いました。
片や、沖縄やうちなーぐちは特別ではない。と、沖縄を見る視点について熱く語ってくださった林賢さん。どこにも方言はあるけど、その方言を禁止されていた歴史を持つのは沖縄だけ。だからこそなのか?うちなーぐちを伝えていかねば、でなく、自然に伝えていくこと(当たり前)がいかに大切かということを教えてくださいました。林賢さんのお話は聞けば聞くほど心がシンプルに整頓されていくようで、当たり前をいかに大切になさっているか。そしてそれが沖縄の精神だと感じることが出来ました。
「外を見ずに、自分の根っこを見る。そこに宝がある。」
アイデンティティーを誇りに思うことから生まれる強さ。その強さへの憧れを持ち、沖縄に住ませてもらっているわたしにとって、宮沢さんの思いは、沖縄に対するさまざまな思いを、音楽という形で代弁してくれる大きな追い風のようであり、林賢さんの言葉に、本物のうちなーんちゅには決してなれなくとも、その気高い精神に近づけるように学ぶことをあきらめたくないと思いました。特別でない=当たり前、の大切さを知れば、特別とは、他と違うという意味でなくなるのだと・・。

桜坂で見逃した方も、宜野湾コンベンションにて、27日(水)2時~島唄ものがたり、29日(金)19時半~うちなーぐちの上映があります。お時間あれば、是非!

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